10年前に難病ALS(筋萎縮性側索硬化症)を発症、闘病生活を送る花の木ゆう太さん(67)=御坊市=は、文芸社から小説「相棒は笑わない」を出版した。
 大阪・東京等で不動産管理などの仕事に就き、帰郷して福祉支援員など務めていたが、ALSを発症。5年前にリタイアして闘病生活に入った。筋肉が衰える進行性の病気だが、現在までに症状が出ているのは両足だけ。移動には車いすを使うが車の運転も可能で、身の回りのことに不自由はなく、90代の父と2人暮らしだがヘルパー等も頼んではいない。
 これから病気が進むと今できていることも不可能になっていくことを危ぶみ、若い頃から書くことが好きだったので「何も遺さず死んでしまうのはもったいない」と文章を書いて各種コンクールに応募。文芸社主催の絵本コンクにも挑戦し、落選はしたが、後日同社から執筆を勧める電話があり小説を書くことを決心。病気が進行性であることから「無駄な時間はない」と集中して書き込み、3カ月で仕上げた。
 自伝風に書いてはいるが、あくまでも想像を自由に広げたフィクション。タイトルの「相棒」とは花の木さんの生活に欠かせない車椅子、パソコン、愛車を指す。どんなことをやってもこの相棒たちは自分を笑うことなく黙って支えてくれる、との意味が込められている。
 主人公は、御坊市周辺の山間地にある「山の家」と御坊市ならぬ「六坊市」の町の家を行き来しながら、畑をつくり、不思議な少女と交流し、亡き母や姉との懐かしい日々を思う。奔放な文体で田舎暮らしをユーモラスに描き、ノスタルジーと同時に明日への力強い希望を感じさせる一冊。
 花の木さんは「この病気は難病だが、私の場合は幸い進行が遅く両足以外は普通に動くので、これだけの本をまとめることができた。歩けなくても生きてはいけるが、夢をみられなくては生きている価値がない。車椅子で移動できる距離は限られていても、想像力でどこまででも行ける。読んだ方に、病気でもできることはたくさんあると感じとっていただければ幸いです」と話している。
 「相棒は笑わない」は全国書店で販売中。定価600円(税別)。