伝統ある貴重な工芸などの技術を保持する技能者に贈られる県の名匠表彰の受賞者が決まり、田辺市龍神村東で和紙づくりに取り組んでいる奥野誠さん(63)が選ばれた。戦後に伝統が途絶えた山路紙(和紙)を復活させ、紙漉き(かみすき)の全工程を昔ながらの手作業で行っている。「孤独な仕事だが、今回の受賞が今後の励みになる」と話している。
奥野さんは、昭和59年に妻の佳世さん(65)と大阪から龍神村に移住。以前は専門学校で絵を指導、佳世さんも高校の美術教師で、移住後には造形芸術の観点から夫婦で和紙作りに取り組んできた。地元で生産されていた山路紙が戦後に途絶えたことを知り、住民から作り方などを聞いたり書物を頼りにしたりして試行錯誤の末に山路紙を見事に復活させた。
製作作業は原料の採取から始め、冬場に刈り取った楮(こうぞ)の木を蒸して皮を剥ぎ取り、手作業で紙すきの全工程を行って作っていく。出来上がった和紙は襖(ふすま)などの素材として活用されるほか、奥野さん自身のアート作品にも使われる。地元の小学生にも、自分達の卒業証書を自分たちで作る紙すき体験で指導している。奥野さんは30年以上取り組んできた和紙づくりを振り返り、「ずっと家内と一緒にやってきた。今回の賞も一緒に受賞したようなもの」と佳世さんへの感謝を話している。

