国保日高総合病院で27日、在宅医療連携拠点事業の公開講座が開かれ、大阪市の訪問看護ステーション「ハートフリーやすらぎ」の大橋奈美所長(47)が約100人の一般住民らを前に講演。末期がんの患者ら自宅で最期を迎えることを望む人のために、訪問看護ができることを紹介しながら、これまで数百人を看取ってきた自身の経験を踏まえ、在宅医療のあり方について話をした。
 大橋さんは大阪市の看護専門学校を卒業し、住吉区にある阪和記念病院に8年間勤務。その後、府立看護大学医療技術短期大学の非常勤講師助手を務め、紀の川市の公立那賀病院での勤務を経て、平成16年から大阪市で訪問看護の仕事を始めた。介護支援専門員や呼吸療法認定師の資格を取得し、現在は医療法人ハートフリーやすらぎの訪問看護ステーションの所長として、自宅での療養生活や自宅で最期を迎えることを望む人と家族をサポートしている。
 大橋さんはこれまで約300人の看取りを経験。今回は末期がん患者ら数人の利用者の事例を写真をまじえて紹介した。末期の肺がんの男性はがん診療拠点病院に入院中、全身の痛みに苦しみ、家族の相談を受け、主治医から「家へ連れて帰る途中に死ぬかもしれない」と反対されたが、本人、家族も了承のうえ、在宅医療に切り替えた。
 病院では一日の量が制限される痛み緩和の麻薬について、大橋さんは「9割の医師は麻薬の正しい使い方をよく分かっていない。危険性をしっかり勉強し、与える薬が患者の症状に合えば、どんどん与えてもかまわない。そうすることで痛みがなくなり、患者に笑顔が戻る」と説明。男性は「死ぬまで家でいたい」と願い、亡くなるまで1週間、ヒノキの風呂に入り、好きなものを食べ、最期は家族に見守られ眠るように亡くなったという。
 ほかにも余命半年と宣告され、病院では「いうことをきかないわがままな患者」といわれていた77歳の女性が、自宅に戻って10年間過ごした例や、自身の父親の在宅医療の様子も紹介。大橋さんは「現在、日本では80%の人が『家で死にたい』と望んでいるが、実際は80%の人が病院で亡くなっています。私たちは自宅で旅立たれた(亡くなった)1人暮らしの女性から、旅立ちの寸前、『最後は1人じゃないんだ』といっていただきました。この言葉がなによりうれしく、訪問看護をしていてよかったと思える瞬間でした」などと話した。