長期ひきこもりの若者の社会復帰、自立を支援するため、ことし10月、美浜町和田地内にオープンしたシェアハウスで19日、ひきこもり経験のあるメンタルサポーターや病院勤務の臨床心理士らの公開討論会が開かれた。「ひきこもって生きることは可能か」というテーマで、自身の経験をもとにひきこもりの利点と欠点、家族の対応の嫌なところやうれしかったことなど、ざっくばらんに語り合った。
若者の長期ひきこもりの増加は1990年代から深刻な社会問題となり、現在、国内でひきこもる若者の数は70万人以上といわれている。シェアハウスは、大学生などのひきこもり回復支援プログラムの研究で知られる和歌山大名誉教授の精神科医、宮西照夫さん(67)が和田の自宅近くにある自身所有の空き家を改修。ひきこもる若者が家族から物理的、精神的な距離をとり、同じ境遇にある若者同士が炊事、洗濯等の家事を分担しながら生活する「プチ家出の家」としてことし10月にオープンした。
今回は施設開設記念として、宮西さんと日高病院臨床心理士の石橋玄さん(45)、宮西さんが副院長を務め、ひきこもり研究センターを開設している紀の川病院(岩出市)のメンタルサポーターらのほか、県外で若者の就労支援活動を行っている女性やひきこもりの子どもを持つ親ら約10人が参加した。
自身もかつてひきこもりだったメンタルサポーターたちは、「目の前のいやなことから逃れることができ、気持ちが楽になった」と口をそろえ、一方、誰にも会わない期間が長引くにつれ、不安や焦りが募るようになったという。心配する親に対しては、心の中で「申し訳ない」「これ以上迷惑をかけたくない」と思いながらも、「どうしても学校や仕事に行けない自分の苦しみを理解してもらえないつらさがあった」という意見もあった。
石橋さんは「彼らのようなひきこもりの若者と接していると、(親や周囲の期待に)無理やり合わせている状態が長く続いた結果なのかなという気がします。失敗を恐れ、不安を抱えつつ、求められるまま、たとえそれが正解でうまくやれたとしても元気になれない。ひきこもりとは、そんな状態が長く続き、もうこれ以上はまずいというときにとる行動の一つではないでしょうか」などと考察。また、宮西さんは「ひきこもりが2年、3年と長期化すると、親との会話もだんだんなくなり、話し相手は自分だけになり、その状態から抜け出せなくなってしまう」とし、「そこに踏み込み、風穴をあけるのは親や学校の先生ではなく、他人で同じ苦しみを共感できる人。つまり、ひきこもり経験のある彼らの出番になります」とメンタルサポーターの必要性を説明した。
ひきこもりの子どもの親からは、「親の対応で傷ついたこと、うれしかったことは何ですか」という質問があった。メンタルサポーターたちは「ヒステリックに学校ぐらい行けと、ドアを激しくたたかれたのがつらかった」「僕の意見を聞かず、親が勝手に進路を調べたりしたことに傷ついた」「僕がひきこもったことを、母が『私のせいだ』と自分を責めたこともしんどかった」などという意見があり、うれしかったことでは「僕のことをあまり責めず、あいさつや会話も普通にしてくれたこと」「自分のやりたいことを黙って認めてくれていること」という声があった。

