DVの被害者支援に取り組んでいる女性が、人権講演で実際の事例として話されていたことが胸を突いた。赤ちゃんがいる夫婦で、妻は夫から暴力を受けていた。赤ちゃんなりにただならぬ雰囲気を察したのだろう、大泣きしていたという。しかし、そんな日が毎日続くと、次第に赤ちゃんは母が暴力を受けていても何事もなくおもちゃで遊ぶようになった。非日常のことも毎日続くとそれが日常になってしまう。子どもが育つ環境がいかに大事であるかを感じさせられた。
 今月10日は世界人権デーだった。その日御坊市で開かれた人権講演では、猿まわし芸人の村﨑修二さんと耕平さん父子が講師を務めた。猿まわし芸と人権がどのように結びついているのかと不思議に思っていたが、2人の話と芸を見て納得した。村﨑さんたちが行っているのは「本仕込み」と呼ばれ、強制的に芸を教え込ませるのではなく、猿と仲間関係、信頼関係を築いた上で芸を教えているのが大きな特徴だった。「2足歩行もたたいて教えれば2カ月でできるようになるが、出来たことを褒めて教えると3年かかる」「怒られた猿はストレスで毛が抜けるが、うちの猿は毛並みがきれいでしょ」と自慢げに話されていたのが印象的だった。
 猿も人も、いかに愛情を注ぐかは同じ。強制ではなく、自主性を育むには時間がかかるし根気のいることだが、それを実践するのが親であり教育者であり、大人なのだとあらためて感じさせられた。自分の思い通りにならないからといって子どもにきつくあたっていないか、無理やりやらせてもそれは本当の力として身についていないのではないか。美しい毛並みのお猿さんに、子育ての初心に帰らせてもらった。 (片)