先日、珍しいトックリランの花を取材した。印南町の高下(こうげ)倫弘さん(74)が栽培を始めて40年にして初めて咲いた花。観葉植物で、花を見せてくれることは稀だという◆メキシコ原産。根元に養分を蓄え、徳利のようにふくらむことからこの名がある。高下さん宅のトックリランは根元の直径が1㍍ほどもあり、徳利というよりは巨大な象の足を思わせる立派な成長ぶり。てっぺんは2階の屋根を超えている。初めて咲いた花は黄色い穂のようで、青い夏の空に映え、台風直前の風に揺れていた。40年といえば、子育てよりも長い年月である。高下さんは「長年世話した甲斐があった」と満足そうだった◆花や果実など植物に関する取材の一番最初は、入社間もない頃のバナナの実。緊張して電話をかけ、「バナナの実がなっておられるそうで」とバナナに敬語を使ってしまった。タカサゴユリが1本の茎から20輪も花を咲かせたこと、月下美人が一夜に70輪以上の花をつけたことなどもあった◆華道のたしなみも園芸の腕前もないが花は好きで、街角の花に季節を感じると心楽しくなる。野生の花には自然の生命力の美しさ、庭の木や草の花には世話する人の心映えをも感じ取れる。亡父も園芸が趣味でエビネランや米ツツジなどを育て、「植物はものが言えないから、こちらが気をつけてやらないと」とよく言っていた◆高下さんは現在、「清姫モミジ」も多く世話している。道成寺の近くで見つけられたためこの名があり、小さく繊細な葉が優しい印象。全国の園芸家に人気があり、「地元でももっと知られてほしい」と話していた。花や草木は心に潤いを与えてくれる。美しい花、珍しい花などいつでも取材させていただきますので、情報をお寄せください。(里)