日高町阿尾、比井崎漁業協同組合が、地元名物クエの胃袋を使った缶詰「くえのもつ缶」を開発。試食させてもらったところ、甘辛く煮込んでほんのり磯の香りが漂い、弾力あるかみごたえがビールのあてにもピッタリだった。
高級食材として知られるクエで、さらに1匹からわずかしか取れないという胃袋を缶詰にしたアイデアがおもしろい。全国的にもこれまで胃袋の缶詰はなく、地元漁港でさばかれるクエの量から、年間にして150缶程度の限定生産でもあり、希少価値が高い。今後、缶詰が広くPRされていけば、多分150缶なんてすぐに完売するだろう。クエは「幻の魚」と呼ばれるが、もつ缶も「幻の缶詰」となって、さらに付加価値がついてくるかもしれない。1缶1000円は少々高いと感じるかもしれないが、こういった希少価値を考えると妥当と言えば妥当。逆に高級志向を好む人らのハートをつかむには、いい価格設定かもしれない。
ただ、一つ残念なのは、地元に缶詰工場がないため、勝浦漁協に製造を委託していること。もちろん委託費や現地への運搬コストもかかってくる。今回、漁協では、くえのもつ缶だけでなく、サバの缶詰も開発しており、今後これらの缶詰販売が軌道に乗るならば、地元に缶詰工場を建設するのも手かもしれない。そうして、ほかの魚や地元食材の缶詰も開発。缶詰と言えば災害時の保存食としても利用されるが、そちらの販路も期待できる。事実、同じような目的で開発した高知県黒潮町の名物カツオなどの缶詰が大ヒットで、工場増設をするぐらい。そんな夢のある産業振興に期待したい。 (吉)