22日未明、印南町印南原地内のJR線路内で、電車が脱線して多数の負傷者が出る事故が発生、と想定した総合訓練が行われた。JR西日本和歌山支社職員と御坊市・日高広域両消防、御坊署員ら合わせて約150人が参加。乗客を安全な場所に避難誘導したり、レスキュー隊は列車に乗り込んで重傷者を担架で搬送するなど本番さながら。万が一の事態に備え、各隊の連携や本部での情報共有を確認した。
 乗客の救護と2次災害防止の対応能力を向上させようと昨年に続いて2回目。厳しい冷え込みの中、午前0時40分に訓練がスタートした。
 和歌山発田辺方面行きの上り列車(3両編成)が稲原―印南駅間を走行中、滝の口トンネル入り口付近で落石を見つけ、非常ブレーキをかけたが間に合わずに衝突。列車は脱線し、多数の負傷者が出たと想定。車内では約10分にわたって照明が落ち、運転手と車掌が車内を行ったり来たりして状況を確認。「足が痛い、救急車を呼んでくれ」「どうなってるんや、早よ降ろしてくれ」などと乗客役も迫真の演技で緊迫感が漂う中、日高広域消防や御坊市消防、県警機動隊員らが続々と到着した。車掌らはドアを手動で開けて非常はしごをかけ、自力歩行が可能な乗客を降ろして安全な場所まで誘導。レスキュー隊や機動隊員は1両目と2両目に分かれて役割分担し、車内に乗り込んで重傷者を優先して救出。負傷者に負担をかけないよう慎重にバスケット担架に乗せて車外に出し、事故発生から1時間16分後の1時56分、全員の救出を完了した。
 現地指揮本部では負傷者の身元確認や搬送病院の手配、患者のトリアージなど各機関が連携して取り組み、情報共有もスムーズに行っていた。対策本部長を務めた岡田学JR和歌山支社副支社長は「昨年の教訓を生かして照明器具を増やし、現場から救護所への搬送もスムーズにできた。情報共有も3機関が連携して行うことで昨年より改善できた。今回の課題を洗い出し、次につなげたい」と話していた。