和歌山市冬野にある県消防学校で、初任教育のため入校している学生の間でいじめがあり、18歳の学生が21歳の学生にアイロンでやけどをさせられたことが14日、県の発表で明らかになった。やけどをさせた学生は別の学生からそそのかされたらしいが、いじめは以前から日常的で、加害者、被害者ともほかに関係者がいるとみられ、県はとりあえず今回の加害者2人を刑事告発する方針で詳しく調べを進めている。
 消防学校は昭和52年7月の開校で、毎年4月から9月まで半年間は、県内各市町村の消防本部に新規採用された消防士が基礎的な教育訓練のため入校している。本年度は県内17の本部のうち、紀美野町を除く16本部から52人の学生(全員男性)が入校しており、月~金曜は学校の寮で共同生活、土日は帰宅。日高地方からは本年度、御坊市消防本部から1人、日高広域消防本部(事務組合)から5人が入校している。
 仁坂吉伸知事が定例会見で報告したいじめは、今月10日夜、学生4人が寝起きしている部屋の中で、橋本市消防本部のA消防士(21)が熱くなって蒸気が噴き出ているアイロンを持って、串本町消防本部のB消防士(18)をふざけて追いかけ回し、最終的にアイロンがB消防士の右肩の背中側(Tシャツの上から)に当たった。B消防士はその夜のうちに、当直の職員に被害を訴え、翌朝、学校近くの医療機関を受診したところ、「全治約1週間のやけど」との診断を受けた。訓練を受けるには問題ないという。
 B消防士に対するいじめ行為は5月ごろからあり、7月からは部屋割りの変更でA消防士とB消防士が同じ部屋になったこともあり、足を蹴るなどいじめ行為がエスカレート。10日のアイロン事件については、A消防士は同じ橋本市消防本部のC消防士(20)からそそのかされてやったらしい。
 仁坂知事と横山達伸消防保安課長の説明によると、消防学校内のいじめの関係者は今回の3人だけでなく、全学生からの聞き取りなどから、加害者側はAとCを含め9人、被害者側はBを含め5人になることが、14日朝までに確認されている。アイロン以外のいじめの内容は、▽枕の中身をばらまかれた▽消灯後も寝かせてくれない▽羽交い絞めにされた――などがあり、今月に入ってからは殴る蹴るといった暴行もあったという。
 消防学校内での今回のようないじめ事件は開校以来初めてのケースで、仁坂知事は「傷害などとんでもないことであり、現時点で分かっている加害者の2人については刑事告発のほか、退学等の行政処分も含めて対処を検討する。また、(アイロン事件の)3人以外にもいじめた学生、いじめられた学生がいるので、学校の管理体制も含め、監察査察監を動員して実態を調べたい」と話し、最後に「県の管轄下でこのような傷害事件に匹敵するようないじめがあったのは、誠に遺憾であり、管理責任を痛感しています。深くお詫び申し上げます」と陳謝した。