がんの免疫療法の一種、ペプチドワクチン療法に取り組む県立医科大で寄付講座による臨床試験が昨年夏から始まり、半年が経過した。手術、化学療法(抗がん剤)、放射線の標準治療に行き詰まった難治性のすい臓がんと食道がんの患者を対象とし、関西を中心に24人の患者が参加。同大だけでなく、北海道から九州までの各拠点医療機関で臨床試験開始に向けた手続きもスタートした。
 がんペプチドワクチン療法は、がんに対する特異的な免疫力を高めてがん細胞をやっつける治療法。がん細胞の表面にはがん特有のペプチド(特定のアミノ酸化合物)が目印として現れるため、このペプチドを人工的に合成して体内に投与することで、ペプチドを目印として攻撃するキラーT細胞(CTL)が他の正常な細胞を傷つけることなく、がんのみを攻撃する。患者自身の免疫力を高めるため、副作用が少なく、近い将来、第4の治療法として確立されることが期待されている。
 県立医科大は、消化器系がん研究・治療の国内トップリーダーである外科学第二講座の山上裕機教授を中心に、昨年、国内初のがん患者団体(市民のためのがんペプチドワクチンの会)による寄付講座を開設。製薬企業などが主導する臨床試験には参加できないHLA(白血球の型)がA2というタイプの患者も対象とし、9月13日から正式にすい臓がんと食道がんのペプチドワクチン治療がスタートした。
 先月まで半年間に、すい臓がんは11人、食道がんは13人の患者が臨床試験に参加。企業主導の臨床試験には参加できないHLAタイプA2の患者もそれぞれ8人、3人となっており、患者と医師、寄付を行う患者団体の願い通り、従来は排除されていた患者も含めて治療が行われている。また、和歌山だけでなく、北海道、東北、関東、中部、近畿、中国、四国・九州の各地方ごとに共同研究の拠点医療機関を選定し、先月から臨床試験開始に向けた手続きもスタートしたという。