家を留守にして外出する時も、田舎では鍵を閉めないことがある。それは都会では考えられないことだろう。しかし、だからと言って犯罪の発生率が多いということもないし、空き巣などに狙われるということも比較的少ない。田舎に住んでいた筆者自身の家でも、昔は鍵をかけていなかった。第一に鍵のない戸さえもあったほどだ。それでも唯一の侵入者といえば野良ネコぐらいで、たまに母親が「ネコが戸を開けて入ってきてくる」とぶつくさとつぶやいていたのを思い出す。
 もちろん「鍵をかける必要はない」と言っているのでない。田舎ならでは人と人のつながりが防犯につながるということだ。見かけない人に気を止め、「あの人は何をしているのだろう。どこの誰だろう」という監視の目が働き、治安の向上につながっているのだろう。
 しかし、最近では近所付き合いが希薄になりがちだ。都会のように隣の人に会ったらあいさつする程度で、それ以外に言葉を交わすことも少なくなってきた。近所の人が何をしているのかも分からないということも増えてきているのではなかろうか。言い換えれば、地域住民の監視の目が弱まり、犯罪の抑止力が低下していると言える。
 みなべ町では新年度から、JR南部駅前に防犯用の監視カメラを設置するという。24時間体制で録画し、警察から映像を求められた時に提供、捜査に協力する。こうした監視カメラの設置は全国的に普及し、犯人逮捕につながっている例も多い。筆者自身も決して否定的な考えではなく、むしろ賛成的な立場だ。しかし、時代の流れとはいえ人の目の監視が低下し、機械に頼らざるを得なくなっているのは残念。複雑な心境だ(雄)