原油価格の高騰の影響でハウス加温設備で野菜や花などを栽培する農家が悲鳴を上げる中、生産コストを削減する強い味方の一つとして、温風暖房の熱効率を高める「熱ECO―FIN(エコフィン)」が注目されている。県の補助対象となったことを受けて日高地区のJA管内でも導入が増えており、すでにコストの2割減に成功した農家もいる。
 ハウス栽培では冬場の低温対策として重油によるボイラー設備を導入するのが一般的。ただ、数年前から原油価格が高騰しており、重油価格は現在1㍑98円前後と最も安かったころに比べると約3倍。「作物を作って売っても、重油代で儲けにならない」との深刻な声が聞かれている。
 これに対し、県では生産コストを削減する設備導入への補助事業を展開しており、電気を活用するヒートポンプ、ハウス内の温度を一定に保つ循環送風機、低温を少しでも防ぐビニールの2重被覆などに対して支援している。この中で25年度に一気に普及したのが、エコフィンだ。温風暖房機の円形の缶体(燃焼室)の外部にパネルを取り付けて表面積を約30%増やすことで、空気を効率よく温める仕組み。これにより、2割前後のコスト削減も可能という。
 ピーマン栽培ハウスで一足早く1年前から導入し、試験的にデータを収集した御坊市熊野、山田啓治さん(64)は実際に2割の削減に成功。これがきっかけで紀州中央管内のピーマンやトマト栽培農家が82基が設置した。ピーマンは最低温度を18度に設定しており、10㌃当たり年間130万円前後の重油代が必要になる。2割削減できれば設置費用30万円前後はすぐに償還できるという。みなべいなみやグリーン日高管内も合わせて200基以上を導入するなど人気が高まっている。紀州中央の担当者は「加温がたくさん必要な品目ほど効果は大きい。ほかの品目でも広めていきたい」と推進に力を入れている。