印南町公民館で16日、県立博物館主催の「歴史から学ぶ防災 印南町をフィールドにして」が開かれ、参加した住民らが町内に残る石碑や古文書から「災害の記憶」を学んだ。講演形式で行われ「鰹節と宝永南海地震」「印定寺に残る高波溺死霊魂之墓碑」などをテーマに、それぞれの講師が話した。
 その中で、印定寺に残る宝永南海地震の「高波溺死霊魂之墓碑」が紹介された。碑には津波が山のごとく凸凹として迫ってきたことや、前代未聞の水の脅威に皆が溺れ親子兄弟がばらばらになったこと、老若男女162人が帰らぬ人になったことなどが記されていた。宝永地震の様子は何度も聞いたことはあったが、実際に当時の文字や文章を見ると、津波が迫ってくる緊迫感や流される人々が生々しく感じられ、津波の恐怖をより身にしみて感じた。
 津波記念碑には供養、潮位標、被害説明、後世への警告、人物顕彰、周年事業などの種類があるという。いずれにしても、津波の恐ろしさを後世に伝え被災を教訓に少しでも被害を減らそうという思いは同じだろう。記念碑を活用した防災は全国的にも行われており、あえて風化していく木の碑を作り、数年ごとに作り直すことで、意識を新たにしようとする取り組みを進めているところもあるという。
 防災についてはどこに避難するか、避難経路はどうする、避難後の生活など、取り組むべきことは多いが根本的に大切なのは、各個人の防災への高い意識。碑には意識をあらためさせられる強いメッセージが込められている。もっと多くの人の目に触れることが必要と感じた。
       (城)