平成23年秋の台風12号で流域被害を大きくした日高川の河川環境について調査研究を行ってきた立命館大学の教授2人が、日高川町の市木久雄町長や町職員、議員ら約40人に研究結果を報告した。報告を聞いて、椿山ダムや防災対策のあり方などさまざまな点であらためて考えさせられた。
研究は大学と町の共同事業で、筆者が説明を聞いたのは里深好文教授の研究結果。データ解析等から、台風時に大量の水を放流した椿山ダムについては「貯水容量が小さすぎた」と指摘。ダムの運用規則見直しについて「見直しすれば安全なんて恐ろしくてとても言えない。ダムの容量を増やさない限り、同じような雨で同じことが起こる」と強く訴えたのが印象的だった。ダムを過信するなという警鐘だ。
防災対策のあり方は「バランスが大事」と力説し、「ハード対策を進めるほど住民生活は不便になる」と弊害を紹介。何十年かに1度の災害に備えてどの程度防災工事をするのか難しいところ。肝心要のダムが小さいなら、大量の水を放流できるよう川幅を広くするのか、堤防を高く強化するのか。実施すれば防災面は強化できても、土地提供など住民は犠牲を払わざるを得ず、生活空間も狭くなる。里深教授はこの点も踏まえてソフト対策が不可欠であるとし、注意点として上流と下流の自治体が連携を密にすること、役場だけでなく地域でリーダーが必要なこと、生きるか死ぬかのギリギリの避難を繰り返さないことなど訴えた。あくまで研究結果は教授らの見解であるが、これらのことも町での防災対策に生かし、職員・議員らが住民に今回の話を伝え、地域でも役立つようにしてほしい。 (昌)