美浜町が住民からの要望を受け、津波からの避難先として整備を計画している吉原(新浜)地内の松原地区高台避難場所について3日、町が議会に対して築山(盛土)とタワーの2種類の構造案を提示した。避難人口や施設の高さは同じだが、概算工事費は築山の約1億5000万円に対し、タワーはその10倍の約15億円。町は安全性や維持管理の面からも築山の方で進めたいとし、議会側もおおむね賛成、執行部の方針を承認した。
 高台避難場所は住民からの要望を受け、松原美浜郵便局裏手の松林に整備。この日は担当の防災企画課がコンサルタント業者からの報告を基に、森下誠史町長らも含めて協議のうえ築山方式で進めることを決定した根拠となるデータを議会の地震・津波対策特別委員会(谷進介委員長)に示した。
 築山、タワーとも避難人口は2000人、避難施設の面積は1人当たり1平方㍍の2000平方㍍、標高は13㍍で、施設を整備するには森林法に基づく保安林(松林)の指定解除が必要となる。説明によると、築山の工事費は盛土、法面保護、土の購入代も含めて約1億5000万円になるが、5階建ての立体駐車場のような施設を2基設置するタワーの工事費はその10倍の15億円。松林に与える影響は土地の形質の改変面積などからタワーの方が小さいものの、10分の1で済む経済性、安全性や防犯面、維持管理の課題の少なさ、環境への影響の小ささなどから、町としては築山構造を採用したいとした。
 議員からは、計画エリア外の周辺にある歴史的遺産の保護の観点から、計画はずさんすぎるという意見もあったが、おおむね築山方式を了承。町は来年度の予算案に基本・詳細設計費を計上しており、今後は「早ければ26年度中に保安林解除の協議に入り、27年度から着工したい」との見通しを示した。
 ほか、南海トラフの巨大地震等を想定した西山が対象の避難所・応急仮設住宅建設用地の候補地選定結果も報告。南海トラフの巨大地震では町内で約2600戸が全壊、または半壊すると想定され、阪神淡路大震災や東日本大震災などを参考に、最大でその3割(782戸)の応急仮設住宅が必要になると算出。避難所用地の候補地としては三尾地区と和田地区の西山に12カ所、和田の入山周辺に2カ所の計14カ所あり、土砂災害の危険性や県道へのアクセス、経済性、用地買収の難易度などから優先順位をつけると、三尾の第二若もの広場が1位になるという。