県立医大は、平成15年1月に導入したドクターヘリの10年間の運航状況をまとめ、このほど報告会を開いた。総数は3532件で、およそ一日1件の割合で出動しており、有効活用されていることをうかがわせている。医師がヘリに乗り込んで現場で処置を施し、県立医大などに搬送して高度救命が受けられる取り組みは、日高地方を含めとくに山間部で威力を発揮しており、救命率アップに役立っている。
 出動件数は初年度は235件にとどまったが、2年目からは毎年300件を超え、23年は最も多い416件を記録した。診療人数の総数は3475人で、内訳は消防からの要請で現場出動して搬送したのが2572人、病院から別の病院への搬送が903人。現場搬送2572人のうち交通事故など外因が1784人、病気など内因が788人。外因では外傷が1564人で最多、以下溺水58人、熱傷と中毒48人ずつと続いている。内因では中枢神経疾患が444人でトップ、心血管疾患177人、消化器疾患43人などとなっている。新生児や母体搬送も120人あった。要請消防別では那賀消防が361件で1位、有田川町消防が349件で2位と、救急到着から病院への搬送に時間がかかる山間部をかかえる消防が多かった。日高広域消防は152件、御坊市消防は52件となっている。
 現場から県立医大に搬送した1947例のうち軽症だったのは263例で全体の14%。1684例が中等症以上で、このうち転院したのが759人で全体の45%、退院が668人で40%おり、85%の救命率。死亡は233人で14%だった。
 このほか県内だけでなく奈良や三重県にも出動実績があるなど救急医療の充実に大きく貢献している一方、日没や天候不良でヘリ運航が不可能で要請に応じられなかった件数も毎年60件程度あった。
 県立医大医事課では「医師がいち早く適切な処置を施すことで、救命はもちろん後遺症の軽減が図られ、退院後の社会復帰率も高まっていると感じている。これからも消防など関係機関と連携し、地域の救命医療の充実に役立てていきたい」と話している。