県立医科大学(板倉徹学長)は13日、脊髄疾患の画像診断に画期的な進歩をもたらす新たなMRI画像処理技術と診断方法を開発したと発表した。
 磁気と電波を利用して脳や脊髄の断面を画像化するMRI検査データを応用。脊髄は細長く、周囲を骨に囲まれているため病変の状態を調べる検査はMRIを使うしかないが、脳とは違い、目に見えないほどの小さな病変が重い症状となる脊髄疾患では、画像の精度が足りない。
 脳のMRI研究では、患者の体格や脂肪量などの個人差、ミエリン(神経細胞の軸を取り囲む物質)の量などから処理される2種類の強調画像(信号強度)の比をとることで、大脳皮質ミエリン量の差を画像化することが可能になるというアイデアが発表された。県立医科大はこれに着目し、整形外科、神経内科、生理学第一の3教室が共同研究に取り組み、2つの強調画像を対比させる新たな画像処理方法を開発。これにより、画像のコントラストが従来の2倍となり、病変の大きさや位置がより鮮明に分かるようになった。また、これまで相対的だった信号強度の個人差も減少するため、同様の方法で得た正常な人の脊髄画像データと比較することで、数値的な判断による診断、治療計画、予後判定が可能になるという。
 今後の臨床応用の見通しについて、整形外科の吉田宗人教授は「MRIの画像上、神経の圧迫が見つかっても、本当にそこが悪いのかどうかは分からなかったが、この方法で悪い部位を的確にとらえることができ、われわれが得意とする内視鏡手術と組み合わせることで、より患者の体に負担の少ない治療が可能になる」、神経内科の伊東秀文教授は「ALS(難病の筋萎縮性側索硬化症)の診断に役立つ可能性があり、現在、検討を進めている」と話した。