列車の脱線事故を想定したJR西日本和歌山支社と消防、警察の合同訓練が30日未明、印南町印南原地内の線路内で行われた。実際に電車を走行させ、けが人の人数などあらかじめ知らされていないより実践に近い訓練で、現地への指揮本部設営や被害状況の確認、乗客の避難誘導、負傷者の手当てと搬送など本番さながら。万が一の事態に備え、それぞれの役割分担と連携を確認していた。
 3両編成の上り列車が稲原―印南間を走行中、滝ノ口トンネル手前で落石を見つけ非常ブレーキをかけたが間に合わず衝突。先頭から1両目が脱線し、乗客に多数の負傷者が出たと想定。試運転中の3両編成電車を現場まで移動させ、午前0時20分、同トンネル内で緊急停止したところから訓練がスタートした。乗客役のJR社員は「何が起こったんや、煙が出てるぞ」「逃げた方がええぞ」「車掌は何をやってるんや」など迫真の演技で車掌に詰め寄るなど車内は騒然。1両目に煙が充満してきたため、車掌の指示に従って乗客は負傷者を抱きかかえるなどして2両目へ避難。2両目との間の防火扉を閉め、車内の状況やけが人の状態を調べ電話で支援を要請した。
 トンネル入り口近くの広場に現地指揮本部を設営し、続々と集まる情報をボードに書き込み、関係機関に出動を依頼。いち早く駆けつけた日高広域消防レスキュー隊が車内に乗り込み、「歩ける人は車外に避難して」と呼びかけ、重傷の5人をトリアージして搬送の優先順位を決め、バスケット担架に乗せて1人ずつドアから救出。「JR社員の人は搬送を手伝って」と指示し、続々と到着した御坊署員や御坊市消防隊も加わり、指揮本部前に設営した救護所へスムーズに搬送。指揮本部では軽傷患者7人を含めて病院の手配に慌ただしく情報を整理していた。最後に誰をどの病院に搬送したかという情報を共有し、訓練が終了した。後日、参加機関が集まって訓練の内容を検証する。
 現地本部で指揮をとったJR和歌山支社の岡田学副支社長は「暗い中でコミュニケーションを取るのが難しかったが、貴重な経験ができた。訓練を検証して課題を洗い出し、今後もシミュレーションや条件を変えて訓練を重ね、万全の態勢を整えたい」と話していた。