先日の市民教養講座、落語家林家たい平さんの講演は、これまで取材した中でも十指に入る印象深さだった。
あらすじ風にまとめると、①学生時代、柳家小さんの落語の温かさに感動。2席を覚えて東北の老人ホームを回り、石巻市では誰とも話をしなかったおばあさんがファン1号に②きょうだいで1人大学へ行かせてもらったのに、学んだことを捨て落語家になると宣言、父に勘当される。数年後母が説得し、両親で師匠にあいさつ。額を畳にすりつけた父の姿が忘れられない③住み込みの修行中、兄弟子に左手でバックハンドではたきをかけろと命じられ、嫌な先輩だと思いながら1年間実践。1年後、寄席で出囃子の太鼓を叩かされると、左手を鍛えたおかげで見事な太鼓が打てた。人の真意はうわべでは分からないと反省④楽屋のお茶汲みも修行と一生懸命に務め、柳家小さんに最高のお茶を入れてほめられた。心がけ次第で自分の周囲から笑顔を広げられると悟る⑤原点の石巻市には毎月訪問。震災後、一般家庭にガスが通る瞬間に立ち合い、「どんな仕事の先にも人々の笑顔がある」と実感した。
単なる笑えるエピソードの羅列ではない。すべてリンクして次につながっていき、「林家たい平一代記」に。そして最後の逸話は、全体を貫くテーマの集大成。見事な構成である。しんみりしそうな話にもすべて笑いのエッセンスがまぶされ、笑い声の絶えない90分だった。
日高川町文化講演会で辻原登さんも述べたように、日高は「日の高く輝く」陽性の地。明るい笑いあふれる舞台が、やはり皆の心にかなう。終演後は「聴きに来てよかった」「アンコールしたかった」と、満足そうな声があちこちで聞かれていた。(里)

