筆者が子どもの頃、川辺町(現在の日高川町)にある祖父母宅を訪れた際の楽しみの一つが五右衛門風呂。風呂は木製で、底板を湯船に沈めて入ったものだ。入る前にかまで薪(まき)を燃やして湯を温め、うちわであおいだり、竹筒でフウフウと吹いて火をあおる。高い保温力が特徴で、湯船につかる筆者はポッカポッカ。ぬるければ祖父母が汗を流しながら薪をくべ、燃やして湯を温めてくれた。筆者も時には、風呂の準備のためにおのを手に薪を割り、祖父母が入る風呂のために薪を燃やした。今はもうないが、もしあればレトロな気分を味わえるだろう。
 薪と言えば、日高川町初湯川の美山温泉愛徳荘に薪ストーブが導入された。ストーブを拝見したが、設置している別館ロビー全体がレトロな雰囲気に様変わり。ベルギー製の本体は、アーチ型の大きな窓が特徴の洗練されたデザインで、煙突も風流。ストーブの周りはレンガで覆われ、ドラマやアニメなどで見る雪国の別荘や外国の住宅のリビングのよう。残念ながらストーブが稼働しているところはまだ見ることができなかったが、窓越しに見える真っ赤な炎が何とも言えない雰囲気を演出するのだろう。インテリアに興味の乏しい筆者でさえ興味が引かれた。
 薪ストーブは、災害時の停電や道路寸断などによる物資輸送の困難な状況でも暖房と明かりを確保できるという理由で愛徳荘に設置されたが、環境に優しいのも特徴。他の化石燃料とは違い、薪となる木々は二酸化炭素を吸収する役割があるため、二酸化炭素削減につながる。家庭で見なくなった五右衛門風呂もしかり。バイオマス燃料が注目される今、レトロと言われるものを今一度見直したい。 (昌)