おととし9月3日から4日未明にかけて、日高川町で死者3人、行方不明者1人、家屋の全半壊60棟など大きな被害をもたらした台風12号豪雨から2年。台風当時、日高川の氾濫で堤防が決壊、川沿いのミカン畑が壊滅的被害を受けた入野地内では、新たな堤防の建設工事が進められている。従来より内陸部に位置する〝引き堤防〟で、完成は平成27年度。ミカン農家をはじめとする地区住民は被害軽減へ大きな期待を寄せている。台風12号豪雨の影響により護岸が崩れるなど大きな被害を受けた日高川。原状復旧工事は現在までにほとんど終了しているが、これに加えて県は85億2000万円をかけて改良復旧工事を実施。入野(和佐~松瀬の約3.6㌔)、三十木(三十木~原日浦の約2.5㌔)、皆瀬(皆瀬~川原河の約2・8㌔)の3地区で急ピッチで進められている。
入野地区の事業は、引き堤防の建設をはじめ、新堤防設置、護岸復旧、土砂の採掘などで引き堤防は上入野、下入野、松瀬の3カ所。上入野は920㍍で従来の堤防より最大50㍍、下入野は1300㍍で最大40㍍、松瀬は490㍍で最大20㍍内陸部寄りに建設されている。堤防が内陸部に移動することで川幅が広がり、川の流下能力がアップ。蛇行も緩やかになり、従来の堤防よりも越流、決壊など被害のリスクが大幅に軽減される。
台風12号豪雨で川沿いの畑が壊滅的な被害を受けた上入野地区では、堤防の改修はかねての願いだった。入野地内の堤防は老朽化が著しく、これまでも大雨などで川の水位が上がれば堤防の中が浸水したり、もろくなった堤防自体から水が漏れたりしていた状況だったが、台風12号ではついに堤防が決壊。上入野地区では栽培面積の7割にも及ぶ6㌶が濁流に飲み込まれ、地元の農地組合は総意の下、町と県に〝引き堤防〟の建設を要望した。建設するに当たり、農地の再建と入野みかんのブランドを守るため3㌶を提供した。
川沿いの畑はことし春までに3分の1のほ場整備が終え、約1000本のミカンの苗木が植えられた。来春には残り3分の2のほ場整備も完了し、約1200本の苗木が植栽される予定。ただ、ミカンは植栽して収穫できるようになるまで最低10年、安定した収入を得るまでに15年~20年はかかる。ほ場整備が終わり、堤防が完成しても先は長い。農地組合の坂本明男さん(64)、高濃泰次さん(46)は「一刻も早く引き堤防が完成してほしい。被害の大きさもリスクも小さくなるだろう。ただ完成しても、以前のように安定した収入が得られるようになるまで私たちに〝完全復興〟は来ない」と堤防建設の槌音を聞きながら話した。

