山に竹林を所有する知人は、20年近く前からタケノコ泥棒に頭を悩ませている。根こそぎ被害に遭う年も多い。先日、この知人がタケノコを掘りに行ったところ、2人組に遭遇した。彼らは、知人と同じ山に土地を持つ男性の案内で、タケノコを掘りにやって来たのだという。この時、その案内の男性は現場にいなかった。2人組は他人の土地とは知らず、男性の土地だと思っていたのかも知れない。だが、その後に姿を現した男性は知人に謝るどころかこう言ったそうだ。「固いこと言うなよ」。土地の持ち主からすれば、少し不愉快な言い草だ。
 タケノコに限らず、山菜泥棒の被害に遭ったという話もよく耳にする。ワラビ、ゼンマイ、フキノトウ、タラの芽。前回の小欄ではコゴミも紹介したが、春の山菜が楽しみな季節。山菜採りというとのどかなようだが、他人の山で許可なく採ったら森林法の「森林窃盗」という犯罪になる。ワラビであろうがタケノコであろうが、罪は罪。高価なマツタケは許せないが、ワラビならいいという地主もいるだろう。少しくらいならいいが、根こそぎなので腹が立つという人もいる。そのラインは地主の気持ち次第といえるかも知れないが、常識ある判断が必要だ。
 前述の話では、タケノコ掘りをしていたのが近くに土地を持つ男性本人だったら、長年のつきあいもあり「少しくらいなら」となっていたかも知れない。だが、長年ほぼ根こそぎのタケノコ泥棒に悩まされ続けているという事情もあり、さらに「固いこと言うなよ」の一言が不愉快さに拍車をかけたようだ。春の山菜が食卓に出るのが楽しみな季節だが、そんないざこざがあっては味わいも半減するのではないだろうか。   (昌)