こんな身近で凄惨な殺人事件が起こるなんて、と身震いした人も多いだろう。JR御坊駅前の旅館を一人で切り盛りしていた女性が刺殺された事件から、間もなく10日がたとうとしている。記者になって15年、これまでも殺人事件は何度かあったが、今回のように凄惨で犯人が逃走中ということは過去にも例は少ない。ましてやJR御坊駅前という人通りの多い場所で、近くには交番やコンビニ、そして至る所に防犯カメラがあることぐらい、ほとんどの人が知っている。それだけに、こんな事件が起こるとはとの思いが一層強い。事実は小説より奇なりというが、人を殺害する時点で常軌を逸しているわけで、一般的な考え方は通用しないのかもしれない。
 それにしてもこんな事件が起こると、いろんな憶測が飛ぶのにまいってしまう。「どこの誰が怪しい」「もう犯人捕まったんやろ」などなど何の根拠もないうわさには首をかしげてしまう。それだけ関心が高い表れではあるが、誤った情報が先走ると、住民が先入観を持ってしまい、捜査に支障を来してしまうこともある。犯人は依然逮捕されておらず、捜査本部は引き続き情報提供を呼びかけていることをしっかり理解してほしい。
 治安の悪化は住民生活に不安を与える。まちの安全はすべての住民の当たり前の望みであり、凶悪事件をのさばらしては絶対にいけない。もちろん捜査するのは警察だが、起こった犯罪を解決するためには、住民の協力なくしてなしえない。読者の中に、ほんの少しでも思いつくことがある人は人ごとと思わず情報提供をお願いしたい。いまこそ地域の団結力を発揮し、住民の力で一日も早い解決に導こう。 (片)