「日食メガネまだありますか?」。先月21日朝、太陽が月に隠れてリング状に見える「金環日食」が国内で25年ぶりに観測され、大きな話題になった。関西では282年ぶり。日高川町のかわべ天文公園には全国各地から家族連れやカップルら200人以上が訪れ、約4分半にわたる神秘的な天文ショーに酔いしれた。次回の金環日食は北海道で2030年、関西では41年とまた当分見ることができないが、ことしは「天文のゴールデンイヤー」と呼ばれ、まだまだ金がつく天文ショーが続く。
 間近に迫っているのが、6月6日の金星の太陽面通過。太陽と地球の間に位置する金星が、太陽の前を横切る現象。約6時間かけてゆっくりと移動し、太陽に小さな穴があいたように見えるという。金環日食よりレアな天文ショーで、20世紀には一度もなく、今世紀は2004年6月8日と今回の2回。次回は105年後の2117年12月11日となる。さらに8月14日には月が金星を隠す「金星食」。その晩にはペルセウス座流星群の活動も活発になるため2つの天体ショーを楽しめる。
 正直、筆者はあまり天文現象には興味がなかったのだが、仕事とはいえ金環日食を見ることができてよかった。神秘的な現象もさることながら、「涙が出るくらい感激した」という大学院生や「金環日食のような美しいゴールドリングを期待しています」と胸をときめかす遠距離恋愛中の女性など、空に思いを馳せる人たちから話を聞けて温かい気持ちにもなった。6日の金星の太陽面通過は、ほとんどの人がおそらく生きている間に見ることができるラストチャンス。あまり興味のない人も、この機会に日食グラスを手に空を見上げてみてはどうだろう。(昌)