慌しかったゴールデンウイークが過ぎたと思えば、早くも初夏の使者がちらほら。日高地方有数の観賞スポット、日高川町の玄子川でホタルが飛び始めた。ピークを迎えると午後7時半ごろから9時ごろまで川に沿って光の帯が浮かぶ。夜の静寂の中、無数の小さな閃光が川のせせらぎとシンクロするように飛び回り、幻想的なショーを演出。見物者をノスタルジックな世界へいざない、心を落ち着かせてくれる。
 美しい川の象徴とされるホタルであるが、玄子川で飛び出したのは11年前から。厳密に言うと姿を消していた。生活廃水や農薬などで水質が悪化したのが原因で、地元区ではかつての美しい川を取り戻そうと全区民を対象としたホタルを守る会を組織し、14年前からは川の清掃活動を実施。ホタルの生態についての意見交換なども行い、そんな努力が実を結んだ。いまでもとても美しいのだが、以前はこれ以上。玄子には筆者の母方の実家があり、幼いころは毎年のようにシーズンに川を訪れ、ホタル観賞を楽しんだ。無数の光が目の前いっぱいに広がり、筆者の服にたかって閃光、手を差し出せば捕まえられた。いまでも目を閉じれば、その光景が浮かぶ。30年以上も前の話である。
 川沿いには、安全に観賞できるようにと遊歩道も完成。毎年、シーズン中には観賞イベントが行われ、琴や三味線、コーラス、ジャンケン大会など多彩な催しに多くの人でにぎわう。ことしは6月2日に開催の予定だ。主役は区民の努力の甲斐あって増え続けている。筆者が子どものときに見た光景、さらにもっと美しかったであろう母や祖父が子どもだったころの光景まで戻ることを願いつつ、ことしも取材の傍ら観賞とイベントを楽しみたい。       (昌)