去る14日午後6時9分、三陸沖を震源とする地震が発生した。付近の海岸部には津波注意報が発令され、青森県ではむつ市、東通村、風間浦村に津波に対する避難勧告が出された。しかし、公民館などの避難所に避難した住民は3市村全体の対象者1万403人のうち3・5%の362人にとどまったという。結果から推測すると、避難勧告の発令で敏感に恐怖を感じたのは少人数だったということだろう。同県は「避難所以外に避難した住民はカウントされていない。停電もなくテレビで情報が得られ、津波の高さは50㌢という報道だった」と要因を話している。
 ところで、今回の避難人数の3・5%の362人というのは本当に少ないのだろうか。筆者はそうは思わない。人数が少ないというのなら、最初から「避難勧告」よりも拘束力が強い「避難指示」を出せばよかった。避難勧告や避難指示は各市町村単位で決定して発令されるが、尊い命を左右する避難に対し、判断の拘束力的なレベル差をつけること自体に疑問を感じる。今回の場合は避難勧告だったため、役場自身も「できることなら避難した方がいいですよ」という弱いメッセージ。そういう意味で避難者362人という数字は妥当ではないだろうか。
 掛け替えのない多くの命が奪われた東日本大震災から去る11日で1年が経過した。津波で多くの犠牲者が発生した宮城県気仙沼市では同日に慰霊祭が行われた。震災の教訓を後世に生かそうと、建立された慰霊碑にこう刻んだ。「大地が揺れたら すぐ逃げろ より遠くへ より高台へ」。この教訓からは避難判断のレベル差は見当たらない。  (雄)