昨年9月の台風12号で大きな被害を受けた日高川町和佐、吉田孝夫さん(70)所有の借家で半世紀以上も前に製造されたレアなカメラが見つかった。昭和30年4月に販売されたミノルタの「ミノルタA」で、吉田さんは30年ほど前まで愛用しており、「本当に懐かしい。当時がフラッシュバックします」と笑顔。カメラは現在も使用可能で、古いカメラなど展示している日高川交流センターに寄贈する。
 ミノルタAシリーズの初代タイプで、同社初のレンズシャッター式ライカ判レンジファインダー(光学視差式距離計の測定に連動してレンズの焦点が合う)カメラ。シャッターを前後逆に搭載することでレンズの出っ張りを薄くしており、ボディーは昭和24年販売のミノルタメモを踏襲しただるま型だが、近代的な軽金属製となっている。
 吉田さんは借家が日高川の濁流にのみ込まれて半壊。被災後、掃除していたところ、棚の上から見つかった。中学生のころ、叔父からプレゼントされたカメラで、当時はうれしさのあまり毎日枕元に置いて寝た宝物だったという。以来、カメラが趣味となり、旅行やイベントに行っては記念撮影などに利用。地元、丹生神社の笑い祭りでは毎年、大興奮しながら1枚1枚フィルムを巻き上げ、シャッターを切りまくった。40歳のころまで愛用していたが、新しいカメラと8㍉カメラの購入を機に使わなくなり、ここ30年ほどは記憶とともにカメラの姿は消えていた。
 借家は取り壊したが、久しぶりの再会に喜びを感じている。市内のカメラ店で鑑定してもらったところ、現在も使用できることが分かり、喜びもひとしお。「寄贈する前に、間もなく運行を始める新型の特急列車を撮ってみようかな」と笑顔で話している。