昨年9月の台風12号で大きな被害を受けた美山中学校(阪本太市校長)で9日、卒業式が行われた。同校は学校全体が浸水し、5日間の休校、クラブ活動は一時休止、体育祭も中止となり、自宅が浸水した生徒も。そんな多くの困難も生徒と家族、教職員、地域住民らが励まし助け合い、乗り越えて迎えた晴れの日。数え切れない思い出とともに、被災で再確認した絆の大切さ、感謝の気持ち、ふるさとへの思いを胸に17人が力強く巣立った。
 台風12号による被害、復旧を受け、「絆・僕らの友情は永遠に」がスローガン。阪本校長は卒業生一人一人に卒業証書を手渡し、式辞。台風12号の被害に触れ、「大変な中でも決して心を倒すことなく、常に前を向いて歩み、見事苦難を乗り越えました。本当に立派です」と声を詰まらせ、学校だけでなく地域の復旧作業にも自主的に参加したことに「困っている人を助けたいという一心で行った行動。人間として最高の行為です」とたたえた。「これからの人生、必ず出くわすであろう困難においても今回のかけがえのない体験を生かしてほしい。人を助ける心を決して忘れず、志を強く持ち、困難をしっかりと受け止めて、そこから新しい芽を出す人生を歩んで下さい」と激励した。
 2年生の高木雄太君の送辞を受け、卒業生を代表して篠原啓介君が答辞。「まるで夢を見ているようだった。目に映っていることが現実なのだと信じることができず、ただ悲しい気持ちになった。これからどうなるのだろうと不安になった」と被災直後の胸の内を明かし、「数日間はとてもつらい時間でしたが、温かいご飯がある、友達との楽しい時間がある、そんな当たり前の普段通りの生活がいかにありがたいかと強く感じました。水害という困難を乗り越えたいま、水害があらためて感謝の気持ちの大切さを教えてくれたように感じます。たくさんの人に支えられてこの日を迎えることがきました」と声を震わせた。最後に「水害後の大変な状況を乗り越えた自分の力を信じて下さい」と在校生にエールを送り、「将来社会に出ても私たちのふるさと美山を胸に、それぞれの道で活躍し、必ずこのふるさとに貢献できるように頑張ります」と飛躍を誓った。このあとあふれる涙をこらえながらEXILEの「道」や「蛍の光」などうたい、数え切れない思い出を胸に刻み込んだ。