ことしも残すところあと1日。日高川町担当の筆者は毎年、1月3日から仕事がスタート。江川、丹生神社の初詣・初笑い神事と皆瀬、下阿田木神社のお弓神事を取材するのがお決まりのパターンとなっているが、ただ来年に限っては少し違う。台風12号の影響で初詣・初笑い神事が自粛となるからだ。毎年、初日から多くの人出でにぎわう観光イベントで、初詣客らは鈴振りと一緒に大笑い。取材を通して筆者も明るい気持ちにさせてもらっているが、致し方のないところ。お弓神事が正月唯一の仕事となる。
 お弓神事は、源平時代から始まったとされる県の無形文化財。矢を射て神意を占い、厄を払うという珍しい伝統行事だ。後に豊作祈願も加わったという。7地区の氏子の代表が15㍍ほど離れた直径2㍍の的を目掛けて20本ずつ矢を放ち、最後の2本は的が0・3㍍、距離も2倍遠くなるルール。毎年、白装束に身を包んだ氏子は勇ましく弓を引き、ギャラリーからは矢が放たれるたびに歓声がわき起こる。現在は聞かれないが、30年ほど前までは的中すれば「クロイゾ」、外れると「シロイゾ」とヤジが飛んだという。笑い神事同様に、毎年そんな様子を見ていると、冷たい風が吹き付ける寒空とは裏腹に心の方は温かい。
 この下阿田木神社がある皆瀬地区をはじめ、氏子の地域は台風12号被害が大きかったところの一つ。来年、放たれる矢には例年以上の厄払いと豊作祈願、つまり明るく幸せな1年になることへの強い思いが込められていることだろう。筆者は来年じっくりと見物、そんな思いが込められた一本一本の矢の行方を最後まで見守るつもり。氏子の思いは必ず通じ、来年はきっとこれまで以上のいい1年が迎えられるはず。   (昌)