台風12号の豪雨で床上浸水し、いまだ再開のめどが立っていない日高川町美山地区の川上診療所(平林直樹医師)は、患者に少しでも健康不安を解消してもらおうと、10日から往診をスタートさせた。往診車も水没した中、平林医師(42)が車を走らせ、普段は診療所を訪ねてくる患者宅を巡回。「ちゃんと眠れていますか」とやさしく声かけし、お年寄りは「先生の顔を見るだけで元気になる」と喜んでいる。
同診療所は川原河地内、役場美山支所東隣の保健福祉センター内に平成12年4月に開設。日高川の増水で診療所内は床上約25㌢まで浸水して泥が約10㌢積もり、レントゲンやエコー、リハビリ機器などがすべて使えなくなった。和歌山市在住で19年10月から赴任している平林医師は4日朝から美山に入り、肺疾患で酸素ボンベが必要な患者宅3軒を回って業者に手配してからは、診療所の復旧へ看護師や職員と一緒に泥かき作業に没頭。片付けは9日で一段落したが、診療所での本格的な診察再開のめどが立たないことから、10日から往診に出かけることにした。普段、往診は診療所まで足を運ぶのが困難な約20人だが、この日は毎日診療所を訪れる30人ほどの患者たちも含めて回った。
民家2軒が完全に流出、数軒が1階天井付近まで水没する大きな被害を出した上越方地内では、約10軒を訪問。水害当日は玄関先まで浸水していたので、裏の石垣を上って避難したという大倉オチヨさん(88)は、平林先生の顔を見るなり「来てくれるなんて思っていなかったので、うれしいわ~」と笑顔。血圧測定や聴診器で健康状態をチェックした平林医師は「夜は眠れていますか。1週間経って疲れが出てくるころなので、無理はせんといてよ。ホコリを吸うと肺炎などの危険もあるので、気をつけてくださいね」とアドバイスしていた。大倉さんは「先生と話をするだけでほっと安心できます」と喜び、近くの古山菊世さん(80)も「先生は本当に親切で熱心で、助かっています」とうれしそうに話していた。
平林医師は「浸水や家を流された患者さんもいるので、少しでも力になれればと往診を始めました。まだ全員を回れていませんので、しばらく続けたい。器具がないので血圧測定ぐらいしかできませんが、とにかく皆さんの元気そうな顔をみれて何より。診療所では薬は出せますので利用してもらいたいし、一日も早く再開できるように関係機関と連携していきたい」と力を込めていた。

