記者は日々、いろんな人に会って話をする。 地方紙とはいえ、ときにはテレビに出てくるような有名人と話をさせてもらえる。 相手に気分よく話をしてもらうのも、 うっとうしい顔をされてしまうのもこちら次第。 礼を失することなく、 緊張しすぎず、 わかりやすく答えやすい質問の仕方が求められる。
 心身にハンデのある人に話を聞くこともある。最近はそうでもないが、取材の際はやはりいまだに肩に力が入る。 「かわいそう」という勝手な先入観、 偏見がどうしても抜けない。大会で入賞したり、運転免許を取ったりというニュースも一見、ホットな話題ではあるが、ことさら大きく扱うのも逆に差別になりかねない。
 心に響く話は、まちに暮らす名もない人の心にある。ともに記憶をたどっていくうち、思いがけずすばらしい言葉や思い出に出くわす。これこそ、自分が 「記者」であることを実感できる瞬間であり、それを傷つけることなくうまく世に出せたときほど、 記者としての喜びを感じることはない。 読者に向けて 「人」 を書く。 基本であって最も楽しく、 最も難しい。
 8月15日に向け、 「戦争」 をテーマに取材を進めている。 大東亜戦争の終戦から66年、 開戦からは70年目の夏となるが、 どの人の記憶も筆者には目が眩むほどまぶしい。 逆にこちらが気負いすぎ、 正直、 当人は意外にそうでもないように感じることもあるのだが、 いま聞いておかねばいずれ語る人は確実にいなくなる。
 昭和の 「あの時代」 を掘り出す作業は、 予想通りのボリュームと重さ。 真夏の期末テスト真っただ中、 結果はいかに...。  (静)