石油の可採年数 (寿命)はどれぐらいか。さまざまな機関が発表しており、それぞれに計算式の前提も異なるため明確な答えはないが、単純には「いまある採掘可能な原油量」を「その年の原油生産量」で割った数字。どちらも変動するうえ、産油国や業界の思惑も絡み、原油価格の高止まりを維持するためのリアリティある線で「40~50年」となっているのだろう。
 世界の原子力史上最悪の事故が起き、脱原発政策が議論となっている。太陽光、水力、風力のほか、石炭や天然ガス、メタンハイドレート、オーランチオキトリウムなど。石油はロシアのどこかに、地下の岩石が変質するなかで石油がつくられる「無機起源説」を裏付けるような油田も存在するという。眉に唾をつけたくなるが、もしこれが本当なら石油は無尽蔵。いよいよ原発推進の錦の御旗、「いつか石油は枯渇する」も怪しくなってきた。
 原発は「危ない」からこそ、札束(電源交付金)でほおをたたくようにして、電力消費地の都会から何百㌔も離れた地方まで送電線を張り巡らせて原発を建設してきた。毎年8月には広島、長崎で悲しみを新たに反核を誓う日本人にとって、今回の福島の事故は3発目の原爆を落とされたに等しいと訴える人もいる。国民はようやく、津波も原発も本当の恐ろしさに気づいた。
 火電を止め、使用済み燃料再処理工場、高速増殖炉、MOX燃料、プルサーマル...無理に無理を重ねてきた日本の原子力政策。この期に及んでも省益、経済を優先しようとする政治家はいまこそ虚心坦懐、子どもたちの未来のため、「間違ってもより多くの人がより安全な方へ」という政治の大原則に立ち返らねばならない。     (静)