大阪教育大学付属池田小学校で児童8人が死亡、教諭2人を含む15人が重軽傷を負った児童殺傷事件から10年が過ぎた。愛情をいっぱいに注いで育てた我が子がある日突然凶行の被害者となったら、想像するだけで胸が痛い。それでも追悼式の各新聞報道を見ていると、「子どもが安全でいられるようなメッセージを池田小が発信し続けてほしい」「命を大切にする子どもたちを育て、次世代につないでほしい」など遺族の方々の前向きで切実な声に胸が熱くなる。今一度防犯や教育を見つめ直さなければと、あらためて強く思う。
 地域に開かれた学校は、事件後、当然ながら安全重視になった。校門は登下校時以外は閉められ、外部から簡単に人が出入りできなくなった。記者も取材で学校を訪れると、簡単には入っていけない教育施設が増えた。ただ、学校によって格差があり、職員室に行くまで誰とも出会わない、声をかけられないこともある。とはいっても、校門を閉めていても入ろうと思えば簡単に乗り越えられるのだから、安全を確保するなら警備員を配置するほか方法はないかもしれない。防犯といっても簡単にはいかない。
 子どもたちを守るためには大人の監視の目が必要だ。警察が学校周辺のパトロールを重点的に行うのはいうまでもないが、例えば教育委員会やシルバー人材センター、ボランティアセンターの事務局を幼稚園や保育園、学校の空き教室に設置したり、グラウンドの一角をゲートボール場にするのもいい。地域の住民や愛好家が集うことで防犯効果があるし、地域交流にもなる。実現可能かは検証が必要だが、悲劇を繰り返さないため、防犯対策を考える機会を持つ必要がある。  (片)