仕事柄、住宅火災の現場を何度も見てきた。その中には、火事に気づくのが遅れて煙や火に巻かれて尊い命を落としたケースもたくさん含まれている。あともう少し早く火事に気づいていたら、自力で外に脱出できていたと思われる場合も結構あるのが現状。火を出さないことが最も重要であるが、予測できないところで、ほんのわずかな不注意で火災は起こってしまう。いざというとき、自分や家族の命を守るのは、自分でしかないのが現状だ。
 ほとんどの人は知っているだろうが、平成18年6月に消防法が改正され、5年以内、すなわち今月末を期限にすべての住宅に火災警報器の設置が義務化された。煙や熱をいち早く感知して警報音で知らせてくれることで、住宅火災による死亡原因の6割を占める「逃げ遅れ」を防ごうというのが狙いだ。外国、とくに早くから取り組んだアメリカでは警報器設置率の上昇とともに、死者が飛躍的に減少したという。助かった人にとっては魔法の製品となったことだろう。
 それにしても設置率は思うように上がっていない。日高地方では全体で50%前後というのが現実だ。義務化といっても罰則規定がないのが大きな要因の一つだろうが、要するに防火意識の低さの表れである。もしもに備える意識をもう少し高く持ちたい。
 それからもう一つ、住宅火災の逃げ遅れで亡くなっているのは、一人暮らしの高齢者が目立つ。火災に気づいても一人では思うように逃げられない人が多い。火災弱者を助けるには地域の協力が必要。火災警報器が近所の人や、行政機関にも連動してつながるようなシステムの構築も検討してほしい。      (片)