新茶の季節である。5月2日は八十八夜だったが、この日に摘んだ茶は特に上等とされる。中国の暦にはない日本独自の風習だそうだ◆のどがかわきやすい体質で、会社でも仕事の合間によく水やお茶を飲み、運転中には自販機を利用する。どの自販機もコーヒー類が主流だが、茶系飲料も1台に1種類はある。最近気づいたが、自販機の茶系飲料は大抵日本茶で、かつて各社から多彩な商品が売り出されていたウーロン茶はあまり見なくなったように思う。「お茶は家でいれて飲むもの」という観念が根強かったためか缶入り緑茶は遅れて広まったようだが、近年は、普段から舌になじんだ物をより手軽に飲みたいとの志向が高まってきたのだろうか。それとも同じお茶なら日本のものをという、日本文化への回帰の表れか◆日本は世界随一の自動販売機王国。飲料用自販機には、事故等の通報に便利なように所番地の表示がある。また近年は災害時対応、つまり災害発生時に無料で飲料を提供できるタイプもあり、当地方でも導入されている。高い普及性を利用したサービスである。こうしてみると、自販機からは食文化史、生活文化史も読み取れる◆半面、高い普及性ゆえに、現在のような節電を必要とする状況下では消費電力量の大きさへの懸念が指摘されたが、業界ではすでに夏場のピーク時の冷却機能停止で消費電力量を従来の10分の1にまで引き下げるなど、全機種で対応済みという。節電は、個々にできるところから心がける方が有効かもしれない◆必要に応じて無駄は削らねばならない。状況をみて、当然抑えるべきところは抑える。だがたとえば一杯の茶の味わいが分かるような、「無駄を楽しめる心」は常に待機させておきたい。      (里)