数年前、大阪市旭区の千林商店街を取材した。国内最初のスーパーといわれるダイエー発祥の地で、いまでも全国有数の商店街として知られる。近年、商店街といえば「シャッター通り」と呼ばれるところが増えているが、取材時は平日にもかかわらず多くの人が行き交い、活気に満ち溢れていた。
 千林商店街を現地の人と一緒に歩き、質問に答えてもらった。気がついたのは改装中の店舗はあっても空き店舗がほとんどないことだった。「いろんな、多くの店舗があるのが商店街のよさ。それに空き店舗があるとイメージも悪くなる。空き店舗が出たら、すぐに次の事業者を手配して入ってもらう」。商店街は何でもそろっている大型店と違い、さまざまな個々の店舗の集合体。魚屋、八百屋、電気店、本屋、菓子屋など便利にそろっていてこそ相乗効果でそれぞれ繁盛する。夕食の買い物に行って魚だけしか購入できないのでは不便で客足は遠のく。商店街としてやっていくためには、そういうところが一番大切なのだと感じた。
 人が集まると、よく重要だといわれるチームワーク。昨年末に耳にした大手ファーストフード店トップのインタビューを引用すると、一人一人の力はプラスになるのではなく掛け算と考えるべきという。2人、3人が協力して力を合わせれば2倍、3倍になっていく。ただし、1人でも0、サボったりする人がいると、みんなの力も帳消しにしてしまう。商店街の話を連想するだけでなく、生活のさまざまな部分に当てはまる気がする。
 身内の揉め事が続く政治が象徴するように、チームワークが働かない社会になりつつある。前出のインタビューはぜひ留めておきたいと思った。       (賀)