編集部内で唯一、同性の同僚だった「と」記者が退職して3カ月、大変さびしい思いをしているところである。筆者は一応女とはいえ女性らしい部分はあまり持ち合わせていないが、彼女は持ち前の明るい笑顔と細やかな心配りを仕事に生かし、いい女性記者であった◆ところで、NHK大河ドラマはことしの「江 姫たちの戦国」で50作目になる。近年は「篤姫」など女性を主役にした作品が多いように思い、調べたところ50作品中女性の主役は11作。全体の5分の1強だが、少ないのか意外に多いとみるべきか。試みに女性の歴史的著名人を数えると卑弥呼、北条政子、紫式部や清少納言ら24人が浮かび、続いて男性を数えて150人で挫折した。何をもって有名とするかで数字は変わるが、後世まで知られた女性の割合がいかに少ないかわかる◆学生時代に友人と鎌倉を旅行し、縁切寺の異名を持つ東慶寺で豊臣秀頼の娘の奈阿姫がかつて住職だったと知った。秀頼の側室の娘であまり知られていない存在だが、大坂の陣のあと処刑されるところ、正室で家康の孫の千姫が体を張って助命嘆願したとのドラマチックな逸話もある。今回の大河の主役、江も知る人は少ないのではないか。壮大な歴史の影に、波瀾の生涯を送った女たちの物語はまだまだ埋もれているはずだ◆封建制度が確立された江戸時代には女性の活躍はなりをひそめるが、戦国時代の女性は政略結婚の犠牲になったというより嫁ぎ先でいわば外交官としての役目を果たしたと読んだことがある。歴史を直接動かすことはなくとも、彼女たちなくして時代は回らなかった◆女性も男性も、本来の特性をのびのび生かして社会と関われることが、いい時代の条件なのだろう。     (里)