14年ほど前、SMAPがうたって大ヒットした『セロリ』という曲について、後輩記者のK君に、「これ、だれが作ったん? なんていう曲?」と尋ねたところ、K君は「いまさらなんということを...マジッすか」という驚きを隠しきれない顔で、「作詞作曲は山崎まさよしで、『セロリ』っていう曲です」とやさしく教えてくれた。それを聞いて思わず、「なんちゅう歌やねん...」とつぶやいてしまった。
 ガンダムやおニャン子クラブなど、子どものころから「ブームのにはのらない、のれない」天の邪鬼なせいか、ブームが去ったあとに「あら、いいですね」の波が押し寄せてきて困る。山崎まさよしもSMAPの『セロリ』をバカにした数年後、友達のY君の車で『ツバメ』『僕はここにいる』がかかっているのを聴いて、「カチャッ」とハマる音がした。いまではすっかりファンになり、先日もこっそり県民文化会館のライブに出かけ、弾き語りのステージに酔いしれた。
 『勝手にシンドバッド』で世に出たサザンもしかり。世間というのは勝手なもので、勢いよく飛び出した新人に対しては、過剰に盛り上がる一方、冷たい視線を浴びせる人も少なくない。後者は、その実力がどれほどのものか見極めがつかないなかで、「ほめる」という価値観をさらす行為を恐れる裏返しなのかもしれないが、勢いのある新人に日本人の反応は冷たい。
 選挙でも新人が予想以上に躍進することがある。一発屋に終わるか、実力派として成長するか、若手が出てくること自体は悪いことではない。政治の世界も有能で実力のある者が生き残る。そんなまちにするために、住民とともに新聞社も力を発揮せねばと強く感じる。    (静)