もう15年も前になるが、初めて日高中津の野球部を取材に行った時、全選手がきちんとあいさつしてくれたことが強く印象に残っている。それ以降もスポーツを担当している関係上、たびたび訪問させていただくが、グラウンド外、学校外でも選手たちに出会うと丁寧に頭を下げてくれる。幼い頃からの高校野球ファン。この仕事に就くまでは野球が上手いか下手か、強いか弱いかの尺度でひいきの学校を選んでいたが、若アユナインたちの姿を見てからは少し変わった。社会人になってすぐの頃の話。取材に行った側だったが、礼儀正しくすることの大切さを教えられたように思う。若アユナインは試合前のグラウンド整備が終わると礼をすることでも知られており、学校周辺地域の住民以外でも応援の声が多い。
 昨年暮れの全国高校女子駅伝に出場した日高。結果は振るわなかったが、テレビ中継を見ていた一部の駅伝ファンには感動を与えるレースができたようだ。アンカーがレース直後、走ってきたコースを振り返って深々と一礼。「礼節を重んじる姿は、すごい感動を与えてくださいました」「疲れた体で礼をする行為にいたく感動しました。日ごろの指導の結果だと思います」。学校へ寄せられた手紙は、こんな内容だった。
 スポーツだけでなく勉強や仕事でも優秀な成績を残すことは最大の目的、目標であり、結果を出せれば素晴らしい。ただ、「成績よりも大切なもの」は必ず存在する。野球や駅伝のトップ選手になれなくても、礼儀や努力、忍耐力、チームワーク等々。スポーツを通じて養うことができれば、長い人生の大きな財産になる。日高女子の記録に残らない部分も記憶には残しておいてもらいたい。 (賀)