車でラジオを聞いていると、愛媛県久万高原町営バスのバス停の名前が入った切符が、ものすごく売れているというニュースがあった。その理由は高知県との県境に近い山あいにある10戸ほどの集落に「郷角」(ごうかく)と名の付くバス停があり、受験シーズンを迎えて「合格」と引っかけて大人気となっているそうだ。同じ路線には「大成」(おおなる)というバス停もあり、町がバスの運行を委託している公社では合格祈願切符として「ごうかくゆき」や「ごうかくから大成ゆき」の切符が販売され、受験生の心をとらえているらしい。
 第二次ベビーブーム生まれで、大学受験時は大変だった。塾通いをしたことはなく、定期的に受ける模擬試験では志望大学の合格判定がことごとく「絶望的」。担任の先生にも浪人する気はあるのか、志望を変える気はあるのかと遠回しに聞かれもし、自分自身もストレートで大学生になれるような雰囲気ではないなとうすうす感じるようになっていた。
 転機となったのは12月ごろの推薦試験。幾つか受験したのだが、すべて不合格だった。元来、負けず嫌いな性格。どこかで何とかなると思っていた甘い自分が消えてなくなり、それから2カ月程度の間は本当に死に物狂いで勉強した。受験日の前日には倒れてしまい、病院に運ばれた。そこまで必死に頑張ってみた結果、2通の合格通知が届いた。
 前日にカツ丼、当日にチョコレート菓子「キットカット」を食べ、「ごうかく切符」を手に受験に挑むのもいいとは思う。ただ、一番必要なのは験(げん)よりも全力でやれることをやってきたことから生まれる自信。受験生たちには、ぎりぎりまで絶対にあきらめを持たずに頑張ってもらいたい。 (賀)