2010806-2.jpg 田舎暮らしの移住先として、日高地方は豊かな自然、大阪市内から電車、車で1時間半というほどよい距離から人気が高く、県内ナンバーワンの移住先となっている。その裏には県や専門の担当職員を配置する町の力も大きいが、不動産などの民間企業や団体の取り組みも抜きには語ることができない。田舎暮らしをテーマに事業を展開、都会の人の日高地方への移住を応援する市内湯川町丸山、㈱近畿マリンクラブの小池佳史社長(57)に最近の人気の傾向などを聞いてみた。
2010806-11.jpg 関西ナンバーワンの移住先 田舎暮らしの移住先として、全国で人気が高いのはダントツで千葉県。日本の総人口の3分の1が集中する関東圏にあって、房総半島の海、東京からの適度な距離、土地の安さなどから、土地・建物の売り物件情報もその数は群を抜いている。2位の長野県は雄大なアルプスの景観、高原のさわやかな気候、関東方面からの近さなどが人気の理由で、次いで大自然の北海道、沖縄県と続き、温暖な気候の和歌山県はその次にランクされる。定年退職後に単身、または夫婦で移り住むには温暖な土地が好まれ、関東の千葉県と同じ理由から関西では和歌山県=日高地方が定住、二地域居住の人気ナンバーワンエリアとなっている。
 多い「ふるさと回帰」型 小池社長によると、田舎暮らし物件を求める客の7割ぐらいは海に近いところを望み、ほとんどは都会ではなく田舎に生まれ育った人たち。最近は仕事を定年退職した団塊世代の問い合わせが多いが、自分の生まれ育った田舎によく似た風景を探し求める「ふるさと回帰」型が少なくないという。「たとえば、団塊世代であれば、『新婚旅行で白浜へ行った』『釣りや海水浴で来たことがある』という記憶を頼りに物件探しに来られる方が多い。四国や九州の出身の人も、田舎暮らしならふるさとへ戻ればいいじゃないかとも思いますが、故郷には兄弟がいて、いろんな事情からいまさら戻りにくく、ふるさとによく似た景観の土地をこの日高地方で探されます」という。
 元気な田舎暮らしもせいぜい15年 たとえば、大阪で暮らす夫婦。夫が定年を迎え、第二の人生を田舎でと考えるとき、現在の大阪の家からの時間的な距離が、物件選びの1つの目安となる。最近の傾向としては、大阪の家を残したまま、日高地方の中古物件を買い、家庭菜園をしたりしながら、大阪と日高地方を行ったり来たりする二地域居住が増えている。「夫婦ともに60歳を過ぎてのセカンドライフ、元気に田舎暮らしをエンジョイできるのもせいぜい15年ぐらいでしょう。夫婦で田舎へ移り住んだ方も、どちらかが病気になったり、亡くなったりすれば必ず都会の子どもたちの元へ戻ります。近くに家族がいない1人暮らしは不安ですし、なにより毎日の買い物なども不便になりますからね。お互いが元気なうちだけ暮らせればいい。そんなふうに考え、中古の家を求める方も多いようです」。
 行政とも連携 近畿マリンクラブはことし2月、県と田舎暮らし応援県わかやま推進会議が主催する初の田舎暮らし物件見学会に案内人として参加した。団塊世代を中心に京阪神から約20人の参加があり、印南、美浜、日高の海岸沿いの町の物件数カ所をバスで巡りながら紹介。このときは商談成立まで至らなかったが、後日、参加者の中から別の物件契約があったという。小池社長はこの田舎暮らしブームは「まだ10年は続くだろう」とみているが、不況が長引くなか、問い合わせは増えているものの、契約物件の金額は下がってきている。今後は増え続ける農家の耕作放棄地を田舎暮らしの人たちに貸し出したり、趣味で農業を始めた人たちが高速SAで農作物を持ち寄って販売する朝市など、他の事業者や行政と連携した企画を考えている。
 「よそもん」とともに発展する政策を そのうえで、日高地方の各自治体を見てみると、現状はまちによって取り組み方に温度差があるのも事実。過疎化に歯止めがかからないのはどこも同じだが、豊かな自然と交通の便のよさなど、田舎暮らしの条件もほぼ同じ。小池社長は「田舎暮らしをしたいという人は、人とのかかわりに積極的な人もいれば、静かにのんびり過ごしたいという人もいます。でも、罪を犯したり、和を乱すような人はいません。いわゆる『よそもん』といわれる人たちと地元の人たちを巻き込み、新たなことをするには当然、摩擦もあるでしょうが、自治体のトップには、清濁あわせのんで、自らの決断で指示を下せるリーダーシップが必要だと思います」 と話している。