真山仁さんの「ウイルス」を紹介します。物語の舞台は新型コロナウイルスを経験した後の日本です。

 国内で正体不明のウイルスが出現し、凄まじい感染力と致死率の高さから犠牲者が増えていき、人々はパニックに陥っていく。デマが飛び交い、陰謀論まで囁かれ、社会全体が混乱に陥る中、パンデミックを抑えようと医療従事者や感染学の研究者、政府関係者が未知のウイルスに立ち向かっていく…。

 新型コロナウイルスによるパンデミックを経験した私にとって、この本で描かれている危機は単なるフィクションとは感じられませんでした。未知のウイルスへの恐怖はもちろんのこと、未知のものに対する恐怖感からデマや根拠のない情報が人々の不安を煽り、社会が混乱していくことにも恐怖を感じました。また、作中では日本がウイルスの発生源とされて描かれており、感染拡大を防ぐため他国から日本を封鎖するように求められるなど、日本が国際社会から排除される恐ろしさも感じました。

 登場人物が多く、それぞれの立場や関係を把握するのが難しく、専門用語も多かったので少し読みにくさは感じましたが、感染症が社会に与える影響について考えさせられました。特に最後の1文がとても印象に残りました。

 この物語はフィクションですが、大げさに書かれた話でもなく、未知のウイルスが広がり、社会が混乱する状況は私たちが実際に経験したコロナ禍と重なる部分がありました。もし再び同じような事態が起きた時、自分たちはどう行動するのかなど、考えさせられることの多い作品でした。(彩)