秋は各種コンサートなど、音楽関係のイベントがよく行われる季節でもあります。11月のテーマは「音楽」とします。

 「ジャン・クリストフ」(ロマン・ロラン著、新潮文庫)

 ベートーベンをモデルにしているともいわれる大河小説。1904年から12年にかけて発表され、ロランはこの作品でノーベル文学賞を受賞しました。幼いクリストフがピアノに出会う場面を紹介します。

   * * *

 ピアノの蓋をあけ、椅子を近寄せ、その上にちょこなんと座る。(略)鍵の上に指をあてると、心臓がどきどきする。(略)突然、音が高まる。深い音、鋭い音がある。よく響く音、唸る音がある。それが一つ一つ、次第に弱まり、消えていくのに、少年はじっと聞き入る。それらは鐘の音のように揺れている。野原にいるとき、風が持ってきてはまた運んでいく鐘の音のように。(略)その声は人々を呼んでいるようである。遠くへ誘っているようである…遠くへ…ますます遠くへ、神秘な隠れ家へ。