「深夜特急」等で知られるノンフィクション作家、沢木耕太郎が珍しくも国内旅行を振り返ったエッセイ集をご紹介します。

 内容 日本テレビ系「所さんの笑ってコラえて!」の人気コーナー「ダーツの旅」をたまたま見た著者は、日本地図にダーツを投げて当たったところへ行くというやり方に、昔の自分も行き当たりばったりの旅をしていたが、そこまで無計画ではなかったことを思い、そういうやり方こそ今の自分にとっては「夢の旅」かもしれないと思う。(「夢の旅」)

 著者が初めて一人で大きな旅をしたのは16歳の時、東北を巡った。その旅の途上、ある駅の待合室で一夜を明かす。待合室の中に居合わせたのはホームレス風の男性1人。ベンチで横になり、毛布をかぶって眠っていると、夜中にその男性が近付いてくる気配。荷物をとられるのではないかと胸をドキドキさせながら寝たふりをしていると、男性は著者の滑り落ちた毛布をかけ直してくれた。著者は、疑ったことを激しく恥じ入る。(「夜のベンチ」)

 深夜特急全6巻ではアジアからヨーロッパまで各国でのさまざまな出会いが語られますが、国内(ほとんど関東から東北ですが)の旅でも心を動かされる出会いは可能であると教えてくれる一冊。

 41編が収められ、先に紹介したのは第1編と第41編です。

 抑制のきいた文章、対象への適度な距離感が著者らしいと感じられる一方、「がんばれ宇都宮線!」ではそれまでの著者のイメージとはちょっと違うユーモアも感じられ、スケール感はこじんまりしていますが、私にはとても面白い一冊でした。「旅のつばくろ、ふたたび」も出ています。(里)