
デビュー10年の新進作家による、「天才」をテーマとした連作短編集をご紹介します。
内容 棋士、スケーター、ボーカリスト、騎手、作家。いろんな分野の天才たちと、それを「観測」する者。その距離の中にある心の揺れにドラマがある。
天才棋士とかつての天才棋士、その闘いをファインダー越しに見つめるカメラマン、多々良。彼はまた、「妖精」と呼ばれた天才フィギュアスケーターの引き際をも見届ける立場に立つ。中学生でプロとなった若き天才棋士、明智昴。アイドルのような華やかな風貌と相まって、絶大な人気を誇る。その彼と、やはりかつて中学生でプロとなった若手棋士、座間の注目すべき対局が行われる。スポーツカメラマン多々良は、その勝負を「スポーツ」ととらえるスポーツ専門誌の女性編集長から依頼を受け、彼らの真剣勝負を撮影するため会場を訪れた。「本当の天才は、戦いの場で丸裸になるのだ。かつて天才中学生だったとか、今、天才中学生だとか、そんなことは何一つ関係なく、ただ、今と今がぶつかり合う」。(「星の盤側」)
天体ならぬ天才を観測する望遠鏡、その覗き手たちにスポットを当てた短編集です。私も、ジャンルを問わず「ただ者ではない」人たちが好きで、幼少時から今までいろんな人達をターゲットに推し活をしてきましたが、そういう視点そのものをテーマとして捉えたのが本書。「憧れ」という単純な言葉ではくくれない、さまざまな想いがそれぞれに「物語」となって結晶しています。
人と人とが関わり合う時、時としてそこには天体観測以上にボルテージの高い、熱い視点が生まれます。(里)


