人気漫画「はたらく細胞」は、体内で営々と働き続けている赤血球や白血球、血小板などを擬人化し、免疫細胞と悪玉のウイルスや細菌との闘いをドラマチックに描き、医療関係者からも高い評価を受けた。
前回に続いてがんの話。現実の私たちの体内もこの漫画のような視点でみると、池井戸潤の小説のような利己的で冷徹なドラマがある。なかでもがんと免疫細胞の闘いは、さながら戦国時代の合戦そのもの。
山中伸弥教授とタモリ氏のNHKの番組で紹介された最新の研究によると、がん細胞は徳川家康ら老獪な武将のように、周囲の相手方の免疫細胞に調略の書状や檄文を送って自らの側に取り込み、敵の陣形を切り崩していくことが分かった。がんは単に暴れ回るだけではない。
がん細胞は周囲の細胞を味方につけ、抗がん剤や免疫細胞の攻撃をブロックすることに成功する。もはや誰も止めることができないモンスターとなったがんに対し、最新医療はがんそのものを狙うのではなく、別の物質を注入することで、敵に寝返った細胞を再度寝返らせる。
そうして関ケ原の小早川秀秋のような武将を増やし、圧倒的な物量でがんを抑え、最終的に消し去ってしまう。がん細胞に仕掛けられた免疫細胞のブレーキを解除し、本来の攻撃力を発揮させる本庶佑先生の免疫チェックポイント阻害剤(オプジーボ)も同様、狡猾で強力ながん細胞には間接的に周囲のはたらく細胞を増やし、活性化させる免疫療法が主流となりつつある。
生活習慣の改善と医療の進歩により、憎きがんを克服できる日は確実に近づいている。それまでは予防と早期発見に努めましょう。(静)


