御坊市藤田町藤井に国登録有形文化財の瀬戸家住宅がある。瀬戸家は天正年間に当地に来往したと伝わる旧家で、江戸時代に大庄屋を務めた。12代の瀬戸健三さんは今年2月までに解体、撤去された旭化成工業和歌山工場(藤井)の前身となった南海紙業を1920年に設立するなど、地域の産業発展をけん引するとともに、大正後期に現在の主屋を建設。敷地内には天保13年(1842)築の穀蔵など重厚な建造物も残っている。
そんな歴史の趣を感じる瀬戸家住宅で先日、御坊・日高地域の祭礼文化を次世代へつないで行こうというイベントが開催された。古きよき伝統をアピールするには絶好の場所だといえ、猛暑の中で奉納された勇壮な獅子舞は大変値打ちがあった。また、建物内の土間床をステージにダンサーの吉田リシェンコ郁生さんが創作ダンスを披露。静かな旧家に響き渡る、太鼓を打ち鳴らしたかのような力強いステップの音。伝統に新たな息吹を吹き込む渾身(こんしん)の舞に見物人は釘付けとなっていた。
瀬戸家住宅では御坊市観光協会が24年秋から、日高川の恵みフルコースを振る舞う場所として活用し、体験型観光の新たなメニューを提案している。今年3月には同家に100年以上伝わるひな飾りが一般公開された。こういった形で瀬戸家住宅でのイベントが増えている。以前、瀬戸健三さんのひ孫に当たる研司さんと話をする機会があり、瀬戸家住宅のさまざまな活用に前向きだった。旭化成和歌山工場はなくなったが、健三さんが遺してくれた瀬戸家住宅を、地域の宝として磨き上げ、新たな活性化拠点として発展していくことを期待している。 (吉)


