児童養護施設から社会に出る子どもや成人式を迎える人たちを支援しようと、和歌山市でオーダーメードスーツを販売する木村麻美さん(47)が、着なくなったスーツの寄付を呼びかけている。活動の原動力は、スーツを買うことも、成人式の衣装を用意することもできなかった自身の体験。木村さんは「スーツを着ると姿勢や気持ちが変わる。スーツを通して人生の大切な瞬間に自信と誇りを届けたい」と話している。

スーツの寄付を呼びかける木村さん㊨と〓阪さん

 木村さんは御坊市出身。父と姉の三人暮らしだったが、父はほとんど家に帰らず幼児期は姉と養護施設で過ごし、中学生時代まで祖母からのわずかな小遣いで飢えをしのいでいた。中学生の頃はファッションデザイナーに憧れた。服を買えなかったので、父親が修理したミシンで父の服をリメークして自分の服を作った。

 高校を卒業する際、就職の面接で着るスーツが買えず、悔しい思いをした。成人式にも晴れの衣装はなく、服装の話で盛り上がる同級生たちの輪には入れなかった。孤独を感じ、式には行かなかった。高校卒業後は、生活のために大阪の美容院で、住み込みで働いた。

 転機は2016年。大阪でテーラーの指導をする〓阪雅宣さん(73)に出会い、憧れだったファッションデザイナーへの思いがよみがえった。〓阪さんの下で修行を重ね、テーラーとして腕を磨き、同年、「NOBLESSE OBLIGE(ノブレス・オブリージュ)」を起業した。

 「環境で可能性が制限される社会を変えたい。これは私にしかできない使命」と、生業であるスーツを通じた支援を決意した。

 4月、市役所や養護施設で聞き取りを行い、スーツを必要としている子どもたちがいることを知り、SNSで呼びかけて着なくなったスーツの回収を始めた。これまでに約50着が寄せられ、フィッティングをして和歌山市内2施設の男女3人に手渡した。採寸では「照れ笑いする男の子や、おしゃべりが絶えない女の子たちの姿が印象的だった」と話す。

 「自治体や地元企業、養護施設と連携し、困難な状況にある子どもたちを支援する仕組みを和歌山で構築し、全国に広げたい」と、今月、一般社団法人「NOBLESSE OBLIGE」を開設。自身の調査から、必要としている県内の16歳から24歳までの100人への譲渡を目下の目標とし、「スーツのおかげで私の人生は変わった。夢はかなうと実感してもらいたい」と意気込んでいる。

 募集の対象はメンズとレディースのスーツ、ネクタイ(未使用に近くデザインの新しいものが希望)でクリーニング済みのもの。スーツカバー付きも歓迎している。

 回収は木村さんのインスタグラム(@noblesse216)に連絡の上、同市黒田のキーサイト5階の事務所への持ち込みを求めている。

 問い合わせはインスタグラムから。