
本著は今や使われなくなったラテン語がどのようにして世界に広がり、またヨーロッパ言語へ影響を与えたかを明らかにした本である。今でも日本の国立大学八十六校のうち二十八校で「ラテン語講座」が開講されている。また現在でも学術用語としてラテン語が使われている事実がある。
ラテン語の起源は古代ローマ帝国で使われていた言語である。始まりは現在のイタリア中西部のラティウム地方の言語に端を発する。この「ラティウム」が「ラテン」と変貌したのである。後にロマンス語系と云われるイタリア語、スペイン語、ポルトガル語、フランス語等へと変遷していく。
中世はローマカトリックが絶対的な権力を持った時代である。ゆえに神学や聖書においてラテン語が学問として珍重された。しかし、中世は話し言葉としてのラテン語と書き言葉としてのラテン語は決定的に分離した時代でもであった。話し言葉としてのラテン語はロマンス語へと変化し、十七世紀になるとデカルトが母語であるフランス語で公刊した「方法序説」を著わしたことにより、これがラテン語との決別となった。しかしラテン語が高尚な教養として受け継がれたのも事実である。日本の大学においても校門や図書館などに「知」の象徴として次のように刻まれている。
上智大学(LUX VERITATIS 「真理の光」)。日本女子大学(VERITAS VIA VITAE「真理はいのちの道」)。慶應義塾大学(CALAMUS GLADIO FORTIOR「ペンは剣よりも強し」)等である。(秀)


