元銀行員の経験を生かした「半沢直樹」シリーズ等、多くのヒット作を執筆している池井戸潤の最新作をご紹介します。タイトルは「ブティック」ですが服飾業界とは無関係で、M&Aブティックのこと。企業の買収や事業承継の支援に特化した専門家集団、だそうです。

 あらすじ 東京中央銀行に入行3年目のエリート行員、雨宮秋都。取引先の企業、ヤエスパワーはM&Aによる企業売却を考えており、その企業評価額を下方修正したM&Aアドバイザリー部の山吹豪らの利益相反行為に義憤を感じ、ヤエスパワーに対して社内秘の評価資料を開示。訓告処分を受けた。辞職を考えるうち、倒産するだろうと思っていたカフェ、コピ・ルアクがM&Aのアドバイザリー会社、ランパス東京によって無事M&Aを成立させたことを知る。ランパス東京の共感した秋都は「銀行でなくともM&Aで困っている会社の力になれる」と、求人に応募。それは総勢15人の小さな所帯ながら、億単位の収益をたたき出す会社だった。

 著者の真骨頂である、現代社会を象徴するビジネス小説。読者に満足感を与えてくれる勧善懲悪の展開が気持ちいい。「半沢直樹」シリーズほどのアクの強さは感じませんが、キャラが立っていてストーリー展開が分かりやすいので、ページをめくる手が止まらないくらい、ついついどんどん読み進んでしまいます。ビジネス世界の中で、良心という目には見えない価値観を大事にしながら行動する「馬鹿正直で、不器用で、頑固」な主人公の姿は、読む者にある爽やかさを感じさせてくれます。(里)